「母乳だけで育てなきゃ」——その思いが、知らぬ間に自分を追い詰めていませんか?
誰かと比べなくていいはずの育児が、いつの間にか“完璧”を目指す苦しい呪縛になってしまうこともある。そんな「完全母乳」という言葉の影に、光をあててみます。
はじめに:完母神話に揺れた私の過去から
「赤ちゃんを母乳だけで育てたい!!」
多くのママが抱く、まっすぐな愛情だと思います。
そして、育児中なら一度は聞いたことがあるはずの言葉
―――「完全母乳(完母)」
この“完璧”を思わせる言葉が、ママの心をガチガチに縛ってしまうことがある。
私自身の経験を通して、そんな「完母の呪縛」について綴ってみたいと思います。
完全母乳という言葉が放つプレッシャー
「完全」という言葉が放つ重圧
「完全母乳」―――その響きには無意識に
- 完璧
- 理想
- 不足なし
というイメージがまとわりついてきます。

つまり「完全じゃない=不完全」「ミルクを足す=足りない自分」
と感じてしまうこともあるのです…
本来、母乳育児に”完全”なんていらないはずなのに…
赤ちゃんの成長は、十人十色。
体重の増え方、飲む量、生活リズム、ママの体調や環境——すべてが違って当然です。
なのに、まるで「完母」がゴールのように語られることで

「そこに到達できない私はダメな母親なのかも…」
そんなふうに自信を失ってしまうママも少なくありません。
自分では気づきにくい”隠れた自己否定”
- 母乳で育てているけど、体重が思うように増えない → 不安になる
- 夕方だけミルクを足した → 自分に「負けた」気がした
- 混合育児に変えた→どこかで「妥協してしまった」と感じる
これ全部、かつてのわたしです〜(笑)
勝ち負けなの!?ってくらい、意地になっていたし
「すごーい」と言われるのが鼻高々で、でもほんとは母乳に縛られて生気吸い取られてました。
でも今なら思います。
それは「完全じゃなきゃダメ」という呪縛のせいだったと。
本当は、赤ちゃんが元気でママが笑っていられたら、それが100点満点の育児だと思う。
今なら、気づくんだ。
でも渦中のときは一生懸命だから、気付かないもんなんだ(笑)
「母乳神話」って?どこから来たの?
“母乳が一番”というメッセージの始まり
1981年にWHOとユニセフが共同で【国際母乳育児行動計画】を採択しました。
ここが、いわゆる「母乳推奨」の公式なスタート地点です。
主なポイントは以下の通り:
- 母乳は赤ちゃんにとって理想的な栄養です
- 6ヶ月以降も適切な離乳食と併用して、2歳くらいまで母乳を続けるのが望ましい
- 粉ミルクや代替品の過剰マーケティングを規制する必要がある

背景にあったのは、命を守るための選択
当時、発展途上国では粉ミルクの販促が過熱。

「母乳よりミルクがスマート」という広告が氾濫し
結果として安全な水のない地域では
感染症リスクが急増しました。
WHOが「母乳を基本に!」と声をあげたのは、赤ちゃんの生命を守るためだったんですね。
ただしこれは、発展途上国や粉ミルクの入手が難しい地域を前提にしたもの。
現代日本のような安全にミルクが使える環境とは、そもそも事情が違うことがわかりますね。
日本における”母乳信仰”の根付き方
日本ではこのWHOの推奨が
“完母こそ正解”のように独り歩きしてしまい
育児本、保健指導や母親学級でも「できるだけ母乳で」という言葉が繰り返されるため、知らず知らずのうちに「母乳=母の当然の努め」、というような刷り込みがされてきました。

もれなく私も…その一人
今思えば、「母乳の呪い」にかかっていたのかもしれない…!!
良かったのか悪かったのか
黒か白かで分けることは出来ませんし、分ける必要もないのですが
今の私なら、もう少しラクな方法を…考えるかもしれません(笑)
昔はミルク育児が主流だったって?
実は、戦後のベビーブーム期から昭和40年代くらいまでは
ミルク育児が一般的だったようです。
当時は粉ミルクの技術がどんどん進んで
「母乳が出なくてもミルクがあるから安心」という流れが
自然にできていました。
母乳にこだわり過ぎず
「赤ちゃんが元気ならそれでいい」という考え方も
もっと当たり前だった時代です。
それが時代を経て、今は「母乳がいい」と言われる流れに変わってきましたが…
本来は育児の”正解”って時代や文化、そして環境によっていくらでも変わるもの。
にもかかわらず、今の基準だけを”絶対のもの!”みたいに思わされて
ママたちは「こうしなきゃ!」と苦しくなってしまうのかもしれません…
※ここでいう今の基準とは、先に述べたWHOで提言されている母乳推奨のこと。
今の日本や世界の育児スタンダードとして、定着している考え方。
言葉のナイフ:ママを傷つける無意識の一言
①「母乳が一番いいからね、頑張って!」
医療者から投げかけられるこの言葉は、悪意がないだけに根強くママの心に刺さります。赤ちゃんにとって母乳が一番!=母乳以外は劣る、という無言の圧力にもなりかねません。
②「出てるのにミルク足すの?」
この何気ない一言にもママは傷つくでしょう。ミルクを足す=努力から逃げたというふうにとらわれがち。
③「完全母乳で育てたの?すごいね」
一人目を完全母乳で育てたら言われる言葉。無意識のうちに、二人目以降も完全母乳で頑張らなきゃいけないとママの脳内で変換される。
④「哺乳瓶に慣れるとおっぱい飲まなくなるよ」
そうなんです、いや実際そうなんですけど💦その恐怖感から、粉ミルクの選択肢が遠のいていき、いつしか母乳育児にガチガチに縛られていく…
⑤「母乳なら免疫がつくよ」
母乳なら強い子になる=粉ミルク育ちは弱い子になってしまう、と不安を煽られる
⑥「うちの子は完全母乳で育ちました(キラキラ〜✨️)」
SNSで見かける眩しいママ達と可愛い子どもたちの写真。それを見て「私も頑張らなきゃ」と自分に無意識の負荷をかける。
⑦「ミルク?まぁ、それもありかもね」
え、だめなの!?と思わされる微妙な間…
⑧「これだけ出てるなら完母でいけるから!!」
母乳がたくさん出る人=完母一択!みたいな、無言の圧力。
どうでしょう?ひとつでも思い当たる言葉、ありましたか?
私は①③④⑧に心当たりがありすぎて…苦笑い。

わたしはいける!「完母」でいける!!!
おわりに:若かった私に伝えたいこと
「もっと自分を解放してあげてもいいし、頑張る自分を褒めていい」
完母こそ正義!とまではいかなくとも
完母でいけてる自分が羨望の眼差しでみられているような気になって
それが無意識に自分に圧をかけていたかもしれません。
「完母でがんばるぞ!」と意気込んでいたあの頃の私へ。
あなたはもう、十分がんばってるよ。
もっと自分を許してもいいと思う。
完母で育てられたら、もちろん素晴らしい。
でも、そうでなくても大丈夫。
完母をやり遂げることが育児のゴールじゃないってこと。
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